原木しいたけが出来るまで
1.榾木作り編
まず原木しいたけを発生させるためには、原木に菌を植えなければなりません。野菜でいう種まきと同じです。原木しいたけ栽培で使用される原木は主に、ナラ(コナラやミズナラ)、クヌギ。いわゆるどんぐりの木です。原木しいたけの菌は、大きく分けるとコマ菌とオガ菌があります。
コマ菌 オガ菌
コマ菌は植菌作業が容易なため、一般のホームセンター等でも売られています。作業は容易ですが、初回発生は早いもので翌年の春に発生します。非常に長期間の管理が必要となります。当園で使用しているのはオガ菌。種菌を製造するメーカーにもよりますが、しいたけ菌が蔓延するのが早く、早いものでは冬期間に植菌を終えると翌秋には発生可能、つまり、年内発生が可能です。また、すべて同じようにみえるしいたけですが、じつはリンゴやナシのようにさまざまな品種が存在します。われわれ生産者はこの品種を、周年をとおして原木しいたけを皆様の食卓にお届けできるように組み合わせて生産を行っています。
植菌専用機械による植菌
当園では植菌専用の機械によって植菌をおこなっています。
原木をセットする
@まず、原木をセットします。
スイッチを入れる
Aスイッチを入れます。
ドリルで穴をあける
Bドリルで穴をあけます。
菌をその穴に入れる
C菌をその穴に入れます。
菌を植えた穴にロウでふたをする
D最後に菌を植えた穴にロウでふたをします。
この工程を繰り返す
Eこの工程を繰り返します。
菌を植えた原木の完成
F菌を植えた原木の完成。一本の原木に菌を植え終えるまで平均約70秒。これまで複数の人間で行っていた植菌作業が一人でもおこなえるようになりました。当園では冬の間、24,000本の原木に植菌を行います。
植菌後の原木
植菌を植えた原木は、榾木(ほたぎ)と呼ばれます。菌を植えた穴にロウでふたをするのは、雑菌の混入を防ぐためです。
2.榾寄せ(仮伏せ)
植菌を行った榾木は、榾寄せ(仮伏せ)という工程により、温度、湿度を保持し寒さと乾燥から保護し、しいたけ菌を初期活着させます。榾寄せ後数週間経つとしいたけ菌が木口付近でも見られるようになります。この木口付近のしいたけ菌を「菌紋」といいます。
榾寄せ後数週間経つとしいたけ菌が木口付近でも見られるようになります。この木口付近のしいたけ菌を「菌紋」といいます。榾木の上部にあるのは杉の葉です。杉の葉にはスギオールという抗菌物質が含まれるため、雑菌の混入を防ぐ効果があります。
3.まき積み(本伏せ)
春、桜の咲くころになると、植菌も終了し、冬の期間榾寄せを行ってきた榾木をまき積みという伏せこみ方に組みなおします。
榾寄せによって初期活着した榾木に、よりしいたけ菌を伸長・蔓延させるための伏せ込み方法です。
4.井桁積み
夏、まき積みで順調にしいたけ菌が蔓延してきたものを、さらに原木の内部に腐朽させるため、まき積みと比較してやや乾燥気味の井桁積みという伏せ込み方に積みかえます。
植菌から井桁積みまでさまざまな工程を経てきた原木しいたけの榾木は、9月より本格的に発生が始まります。ここまでくると秋の発生まではまもなくです。
5.浸水
浸水は原木しいたけの榾木に刺激を与え、発生に必要な水分を含ませるために行います。
水温は15℃前後にセットします。
浸水の時間は使用回数にもよりますが、4時間から24時間位おこないます。
6.芽出し
浸水を終えた原木しいたけの榾木は、しいたけの芽の発芽を促すため、芽出し室という設備で芽出しを行います。
室内の温度は18℃。この室内で約2日から3日間じっくり寝かせて原木しいたけの芽が出てくるのを待ちます。
7.展開
浸芽出し室において芽出しを行った原木しいたけの榾木は、発生舎という室内で展開されます。
原木しいたけの榾木を展開して1日経った榾木の様子。原木の樹皮を破って芽が出てきています。原木しいたけは、樹皮を破ることのできる強い芽しか発生できません。この「樹皮を破る」という菌床栽培にはない原木栽培独特の現象が、食材としての原木しいたけの食感、香り、食物繊維の豊富さといった特徴を決定づける重要な要素となるのです。
ごつごつとした樹皮を破った原木しいたけは、菌床シイタケと比較して形が均一にはなりにくいのも特徴です。ときにはこのような形の原木しいたけも発生します。
発生舎内で展開後、3日から4日経つと原木しいたけの収穫が行えます。収穫後パックや袋に詰めて、皆様の食卓にお届けとなります。
8.休養
発生を終えた原木しいたけの榾木は、養生舎という設備において休養させます。休養後、約30日〜50日後に再び浸水を行い原木しいたけを発生させます。以上で「原木しいたけが出来るまで」の解説はおわりです。
以上で「原木しいたけが出来るまで」の解説はおわりです。